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インボイス(適格請求書等保存方式)制度と消費税の免税事業者

木曜日, 6月 10th, 2021

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは?

インボイスって何でしょうか?

インボイスとは適格請求書のことです。

適格請求書(インボイス)とは、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。

具体的にいいますと、「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータのことをいいます。

 

「インボイス制度」といわれる新しい制度の正式名称は、「適格請求書等保存方式」です。具体的には以下に示す要件を満たした請求書や納品書を交付・保存する制度です。

1.適格請求書発行事業者の、氏名または名称および登録番号

2.取引年月日

3.取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨)

4.税率ごとに合計した対価の額および適用税率

5.消費税額

6.書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

 

そしてインボイス制度による売手側と買手側に求められることは、

≪売手側≫

売手側である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません。
そしてさらに交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります。

≪買手側≫

買手側は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となります。

 

課税事業者と免税事業者とインボイス制度

インボイス制度が導入されると、事業者にはどのような影響があるのでしょうか。

課税事業者と免税事業者では、受ける影響が異なります。

 

≪課税事業者≫

インボイス制度が始まると、課税事業者はインボイス(適格請求書)の発行が義務付けられます。

そのため、事前に適格請求書発行事業者の登録をしておく必要があります。

さらに、インボイスのシステムに対応した経理システムの整備や、取引先の事業者が課税事業者に該当するかどうかの確認なども求められることになります。

 

≪免税事業者≫

インボイス制度のもとでは、課税事業者(消費税の課税対象者)が免税事業者(消費税が免除されている事業者)との取引で支払った消費税は、仕入税額控除を受けられません。

つまり、売上にかかった消費税から仕入れにかかった消費税を引くことができないわけです。

支払った消費税分は、課税事業者が自腹を切って納税することになります。

そのため免税事業者は、課税事業者から課税事業者になるように要請されたり、あるいは免税事業者のままだと取引を控えられたりする、という可能性も出てきます。

 

インボイス制度と売上1,000万円以下の免税事業者

インボイス制度導入により最も影響が出ると考えられることが、適格請求書を発行できない事業者からの仕入れは「仕入税額控除」ができない、という点です。

従来は請求書がない場合、支払先の名称や請求書のない理由を帳簿に記載することで仕入税額控除を受けることができました。

しかし、インボイス制度により「仕入税額控除」の要件が「適格請求書」でなければならない、となることから、より厳しく規制されることになります。

支払う側の会社は、上記にも述べたように、材料の仕入先や外注先、経費の支払先まで「適格請求書」を発行できる事業者を選定し直さなければならなくなる可能性が出てきます。

 

そして、最も影響が出るのが売上が1,000万円以下の免税事業者の方です。

フリーランスの方や個人事業主など、年間の売上高が1,000万円未満の方は消費税の免税事業者となっているケースが多いです。

適格請求書を発行できるのは「課税事業者」だけですから、取引先から「適格請求書」を発行してくださいと、取引先に頼まれても免税事業者の場合「適格請求書」を発行することができません。

 

たとえば、、、

⇒取 引 先 「適格請求書を発行してもらえませんか?」
⇒免税事業者 「うちは免税事業者のため、適格請求書の発行はできないのです。」
⇒取 引 先 「そうなんですね。それでは適格請求書を発行してもらえる、課税事業者と取引をすることにします。」

 

このように、取引先は、適格請求書を発行してくれる事業者と取引をしないと、「仕入税額控除」の恩恵を受けることができませんから、今までのお付き合いで取引していた免税事業者から他の課税事業者に取引先を変更する可能性も出てくるわけです。

 

したがって免税事業者の方が取引を続けたい(売上を減らしたくない)のであれば「消費税課税事業者選択届」を事前に税務署に届け出して課税事業者になっておく必要があります。

 

今まで消費税納税額の分だけ得をしてきた免税事業者の方も、インボイス制度により納税義務が生じることになる可能性は少なくはないでしょう。