退職金の受け取り方と手取り額と税金や社会保険料の関係

一時金形式の場合、非課税枠が多い

シニア層が定年時などに受け取る退職金は老後のマネープランを支える柱の一つです。

退職金の受け取り方は勤務先によって異なり、定年時に全額をまとめてもらう一時金形式や分割して受け取る年金形式、両者を併用する形式があります。

日本経済団体連合会と東京経営者協会の調査によると、併用形式の企業が2018年9月末時点で7割超を占めます。

併用形式では一時金でもらう分と年金でもらう分の金額や割合を選べる場合があります。

 

退職金の受け取り方は、3つの方法

60歳時点で退職金が1,900万円で受け取り方は、一時金、全額年金、併用で半額ずつ、という3つの方法があります。

【前提】

60歳からの10年間で収入がどうなるかを比べてみましょう。

年金形式の運用利率は1%とし、退職金のほかに64歳まで再雇用によって年収390万円、65歳から公的年金を年間260万円受け取る、という前提です。

 

まず、税金などを引く前の額面ベースでは、全額年金がおおよそ5,250万円と最も多くなります。

会社が一定の利率で運用することが大きく、全額一時金で受け取る場合を100万円程度上回ります。

併用するケースでも全額一時金に比べて多くなる計算で、これだけを見ると年金形式が有利に考えられます。

 

しかし、所得税と社会保険料を差し引いた手取り額ベースでは、全額一時金が約4,700万円と最も多くなります。

次いで併用方式、全額年金形式という順で、全額一時金で受け取る方法と全額年金で受け取る方法とでは、受け取る差額が200万円程度の差が出ます。

 

退職金の手取り額を増やすためには税金を抑える

退職金の手取り額を増やすためには、まず、税金を抑えることが重要です。

 

一時金でもらうと所得税の計算で「退職所得」扱いとなりますから、退職所得控除という非課税枠を使えます。

非課税枠は勤続年数20年までは、年40万円で、20年超は年70万円ずつ増えます。

例えば、大学卒業後に60歳まで38年間勤務した場合には、2,060万円までが非課税となります。

【計算式】40万円×20年+70万円×(38年-20年)=2,060万円

非課税枠を超える場合には超過額の半分が課税対象となります。

 

一方、年金形式でもらう場合「雑所得」となり、「公的年金等控除」という非課税枠の対象となります。

公的年金などと合算して60歳代前半は年60万円、後半は110万円までが非課税で、非課税枠を超えた分は全額が課税対象になります。

 

年金形式は年間の非課税枠を超えやすいのに対して、一時金形式は非課税枠が大きいです。

退職日を選択することができるのであれば、勤続年数は端数切り上げということも意識しておくといいでしょう。

仮に1年と1日勤務しても、2年として計算されるためです。

勤続年数が1年増えれば、5万円から20万円ほど税金が減額されます。

 

退職金と社会保険料の関係

社会保険料と年金の関係も忘れてはいけません。

年金形式で退職金をもらえば、国民健康保険料の計算に影響し、社会保険料の負担増につながります。

健康保険や介護保険の保険料は今後上昇していく可能性もありますから、年金形式で受け取ると将来の負担が増えるリスクが考えられます。

 

税金や社会保険料の負担を踏まえると、定年まで勤めた企業での勤続年数が40年程度で退職金が約3,000万円までなら、一時金形式でもらうほうが有利になりやすいでしょう。

 

一方で、退職金が高額で非課税枠を大きく上回る場合だと、一部を年金にする方がいい場合もあります。

例えば非課税枠を2,000万円上回ると半額の1,000万円に対して課税され、税負担が重くなる可能性があるためです。

 

さらに、年金の利率や受取期間も考慮する必要があります。

運用で保証する利率が年2.5%などと高く、受取期間も20年くらいの長い場合は、年金形式が有利になることもあります。

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