建設業の未成工事支出金(仕掛工事)が税務調査のポイント

建設業にとって「未成工事支出金」は、在庫に関する独特の勘定科目で、未完成の現場の原価を意味します。ところが、この在庫の金額をいい加減に処理している会社が少なくありません。

建設業によく見られる数字の調整が、この在庫を使ったものです。利益を多く見せようとするなら、在庫を多く計上し、逆に利益を少なく見せようとするなら、在庫を少なく計上する、といったものです。

このように、在庫が『どんぶり勘定』で評価されているのですから、経営の実態はさらに不透明になってしまいます。そして、在庫の金額が実際の金額と大きくかけ離れてしまうことは、工事原価をきちんと把握していないということに繋がります。

つまり、工事は受注したけれども、儲かっているのか、儲かっていないのか、わからなくなるのです。工事が完成してから黒字か、赤字かがわかるのですからまるでギャンブルのようなものです。

近年では、公共工事削減により建設業界が不況に見舞われ、経営環境はどんどん悪化している中で、受注が取りにくくなっていることから、価格競争の渦の中に飛び込んでいかなくてはなりません。

ところが自社の工事原価を知らずに価格競争に巻き込まれれば、仕事を取りたいという想いだけで先走りして、赤字受注をしてしまうのです。

いったん赤字受注をすると、赤字を穴埋めするために、再び、赤字受注を繰り返してしまう、といった悪循環になります。

さらに再建を難しくしてしまうのは、赤字受注で生じた資金不足を借入金で穴埋めしてしまうことにあります。

自社の工事原価をしっかりと把握し、これくらいまでなら値段を下げても大丈夫だという基準を持っていれば、会社を傾けてしまうような赤字受注を未然に防ぐことができるのではないでしょうか?

建設業にとって、いい加減に処理されやすい「未成工事支出金」をきちんと把握することが企業を健全化するためのポイントです。

建設業では、決算時に慌てて期末の未成工事の原価を集計している会社が見受けられます。期中の原価を現場ごと、業者ごとにしっかり把握できていない証拠です。

12ヶ月間期中の原価を管理していなければ、決算で数字が大きく変わってしまうのは当たり前のことです。

原価管理とはどうしても守りを固めるイメージが強いのですが、実際には攻めを強くするためのものでもあるのです。未来の利益を現在の時点で把握できていれば、早めに手を打つことができるからです。

 

 

 

 

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