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所得税確定申告の雑損控除と災害減免法とは?

土曜日, 1月 25th, 2020

台風や水害などで被災して住宅や家財に損害が出た場合、損失額などを「雑損控除」として課税所得から差し引いて確定申告を行うと、

所得税や住民税の負担が軽減されます。

制度について改めて確認しておきましょう。

 

住宅・家財が被災で税軽減

所得税の確定申告とは、1月~12月の収入と、経費を集計して、生命保険料の控除など所得から控除できるものを計算して、申告をする制度のことです。

税金を納め過ぎている場合は、所得税が還付されたり、翌年の住民税が安くなったりします。

雑損控除は、住居や家電製品など生活に必要な資産の損失が対象です。別荘や30万円を超える貴金属や美術品などは対象となりません。

災害のほか、盗難や横領による損失も対象となります。

 

国税庁によると、2018年分(平成30年)の確定申告では、大阪北部地震や西日本豪雨、北海道地震など災害が相次いだため、雑損控除の適用者は約4万4,000人と前年の約1.9倍になりました。

雑損控除額は1,138億円と前年の約3.6倍に上りました。

大きな損失がある場合、確定申告をすると税負担を減らせる場合があります。国税庁のウェブサイトで計算や申告書の作成もできますので、確認しておきましょう。

 

確定申告をするためには、雑損控除として所得から差し引ける金額(控除額)を確定する必要があります。

控除額の計算には、まず損失額から火災保険などの保険金で補填された金額を除いた「差引損失額」を求めます。自宅の取り壊しや災害ごみの撤去などにかかった「災害関連支出」も合算します。

 

《いずれか多い方の金額》

計算方法は2通りあり、金額が多い方を適用することができます。

①(差引損失額+災害関連支出の金額)-総所得金額の10%

②災害関連支出の金額-5万円

また、控除額が災害があった年の所得より多い場合は、差し引けなかった分を翌年以降3年間繰り越して控除できます。

 

【例】

専業主婦の妻とお子様が1人いる会社員Aさんの自宅と家財が台風で被害を受けたケースで計算してみましょう。

Aさんの総所得金額は550万円、給与収入は750万円です。

Aさんは、時価1,500万円相当の自宅が全壊したものの、保険金で全額が補填されたため、差引損失額はゼロになります。

家電や家具、通勤用の自家用車などの家財(合計で時価500万円相当)が浸水により使用できなくなりました。自宅の片づけに50万円かかりましたが、保険金による補填はありませんでした。

 

①の計算式にあてはめると

差引損失額500万円と災害関連支出50万円の合計から総所得金額の10%(55万円)を引いて495万円になります。

②の計算式にあてはめると

災害関連支出50万円-5万円=45万円になります。

金額が大きい①を用いて雑損控除を申告した場合としない場合とで計算すると、

雑損控除を申告しなかった場合、所得税額は約22万円であるのに対して、雑損控除を申告すると、所得税額はゼロとなり、納めた所得税が全額還付される結果となります。

 

「災害減免法」

被災時の税負担を軽くする制度として、雑損控除のほかに「災害減免法」という制度があります。

住宅や家財の差引損失額が時価の2分の1を超えると使うことができ、所得に応じて所得税が25%、50%、100%のいずれかの割合で減免となります。

ただし、翌年に繰り越すことはできず、所得が1,000万円を超える人は使うことはできません。

 

《選択適用》

雑損控除と災害減免法はいずれかしか使えないため、どちらが減税額が多いかなどを計算して、有利な方を選択するようにしてください。

Aさんのケースでは、災害減免法を選択すると、所得税額は50%減免されて、11万1,250円となり、雑損控除を利用した方が有利となります。

 

確定申告で雑損控除をした場合、翌年の住民税にも自動的に反映されますが、災害減免法を選んだ場合は、住民税には適用されません。

別途、住民税の雑損控除を自治体の窓口で申告する必要がありますので注意して下さい。

 

被災者が多い地域では、2月~3月の確定申告の時期に税務署や自治体が納税の相談会を開催したり、確定申告の期限を延長したりするケースもありますので、事前に確認しておくとよいでしょう。

 

相談会では、被害割合が分かる罹災証明書(りさいしょうめいしょ)のほか、資産の時価や持ち分などが分かる資料や取り壊しなどにかかった費用、保険金の金額が分かる資料などを持参するといいでしょう。

時価がわからない場合は、購入金額(取得価額)や取得時期がわかるものを用意します。

まずは、自治体のウェブサイトや広報誌を確認しておくようにしましょう。

 

⇒雑損控除と災害減免法の詳しい内容について