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給与所得控除や配偶者控除も所得制限で所得税と住民税が増税

木曜日, 3月 28th, 2019

給与が多い人は税負担増

2019年以降も税金や社会保険で制度や仕組みの変更が相次ぎます。

特に見逃せないのが所得税・住民税で控除の仕組みが一部変わることです。

家計への影響は年収や家族構成により異なりますが、子育てを終えた中高年サラリーマンの世帯を中心に支払う金額が増える可能性があります。

社会保険料の負担がどうなるのかも合わせてみてみましょう。

 

2020年にかけて家計に影響を与えそうな変更はどのようなものがあるのでしょうか?

消費税率が8%から10%に引き上げられるだけではないですね。

これまで負担が増えていたのは主に健康保険などの社会保険でしたが、今後は税金の負担がずしりと響いてきます。

税金の計算上、所得から差し引いて税額を抑えられる「控除」の仕組みが相次いで見直されています。

全体としては負担増につながるケースが増えそうです。

 

税金や社会保険などをめぐる主な見直し

2019年
  • マクロ経済スライド4年ぶりに実施。年金支給額を抑制。
  • 国民年金保険料100円上げ。産前産後の保険料を免除。
  • 介護保険で現役世代の負担を見直し
  • 10月に消費税率引き上げ
  • 年金生活者支援給付金制度が開始
  • 3歳~5歳対象の幼児教育・保育が無償化
2020年
  • 所得税・住民税の基礎控除が10万円拡大
  • 給与所得控除が10万円縮小、控除額上限が引き下げ
  • 公的年金控除が10万円縮小、控除額に上限
  • 低所得世帯で高等教育の授業料免除、奨学金を拡充

 

配偶者控除は年収に上限

まず、配偶者控除を対象に2018年、世帯主の収入に初めて上限が設けられました。

収入が1,120万円(所得900万円)を超えると、所得税で38万円の控除額は段階的に縮小します。

収入が1,220万円(所得1,000万円)を超えるとゼロになります。

受け取った源泉徴収票などで税額が増えたのを知り、控除見直しの影響を実感した会社員の方も多いでしょう。

2020年には基礎控除が、現行の38万円から48万円へと10万円拡大されます。

その一方で給与収入から差し引ける給与所得控除が、10万円縮小されます。

これだけみると負担は差し引きゼロです。

しかし、収入が多ければその限りではないです。

給与所得控除の金額は給与収入の水準に応じて増える仕組みですが、収入が一定を超えると頭打ちになります。

給与所得控除の収入による上限はここ数年、下がってきています。

現行、収入が1,000万円を超えると給与所得控除は上限の220万円が適用されます。

さらに2020年からは収入が850万円を超えると195万円しか控除できなくなります。

23歳未満の扶養親族がいる世帯などは負担が増えないように別途調整するが、その他の世帯では影響を受けるケースが少なくありません。

特に50代の会社員は要注意です。収入が多くて子育てが一段落した人では負担が大きく増えるケースがあります。

 

社会保険の見直し

次に社会保険をめぐる見直しの確認です。

4月にマクロ経済スライドの実施、10月に年金生活者支援給付金の開始が予定されていますが、これらは主に年金世代向けです。

現役世代にかかわる大きな制度変更はありません。

会社員らが加入する厚生年金は保険料率が引き上げられ続けた後、2017年9月から年18.3%(労使折半)の水準に固定されています。

給与から天引きされる額は大きいものの当面、負担増は気にしなくてよさそうです。

 

制度見直しで目を引くのは介護保険の分野です。

会社員らが納める介護保険料は、健康保険組合などそれぞれの医療保険制度が徴収します。

その金額は国が各組合などに割り当てています。

割当額は以前は加入者の人数に応じて決めていましたが、2017年度以降は、加入者の収入総額で決める「総報酬割」へと移行中です。

2019年度には総額の4分の3、2020年度に全面的に移行します。

この結果、収入が多い加入者が集まる組合では割当額が大きくなり、加入者から徴収する保険料は増えることになります。

 

介護保険に比べて保険料の支払い負担がより重いのが健康保険です。

制度上の大きな変更はありませんが、高齢化を背景に国全体の医療費は年々膨張しています。

健保組合などを通じて現役世代が支払う保険料の料率は、これからも上昇が続く見込みです。

税金や社会保険の負担額を年収別にみるとどうなるのでしょうか?

 

2020年の税金・社会保険料を試算(下段は2017年との比較)

前提条件:専業主婦世帯で子供無し

(単位:万円)

項目/ 年収 年収500万円 700万円 1000万円 1150万円 1300万円
所得税・住民税

30.9万円

▲0.3万円

58.0

▲0.5

131.6万円

+3.6

182.1

+11.9

232.5

+15.9

厚生年金保険料

45.7

+0.2

64.0

+0.3

89.2

+0.4

92.3

+0.4

95.5

+0.4

健康保険料

23.8

+1.0

33.4

+1.4

47.7

+2.0

54.8

+2.2

62.0

+2.5

介護保険料

4.0

+0.4

5.6

+0.5

8.0

+0.8

9.1

+0.9

10.3

+1.0

雇用保険料

1.5

±0

2.1

±0

3.0

±0

3.5

±0

3.9

±0

合計

106.0

+1.2

163.1

+1.6

279.4

+6.7

341.9

+15.4

404.2

+19.9

 

2020年時点の負担額を、配偶者控除が見直される前の2017年と比べたのが上記の表です。

専業主婦世帯で子供はいないと想定したものです。

 

健康保険料率は健保組合の過去10年平均の上り幅(年0.18%)が続き、介護保険料率は厚生労働省のデータを基に2016年度比1.14倍としています。

負担の増加額(手取りの減少額)は、年収500万円、700万円では1万円台にとどまっています。

これらの世帯は控除見直しの収入要件に該当しません。

年収1,000万円の世帯ですと、給与所得控除の見直しが関係してきます。

所得税と住民税を主体に増加額は6.7万円となります。

 

さらに、年収が高い世帯ですと配偶者控除と給与所得控除がダブルで響いてきます。

配偶者控除額は年収が1,150万円の世帯では減少し、年収が1,300万円ではゼロになります。

負担の増加額はそれぞれ、約15万円、約20万円を大幅に負担増となります。

 

これまで社会保険料を中心に増え続けてきましたが、消費税の税率アップと控除見直しによる税金の増加が加わりますから、家計の負担は重くなります。

夫の年収が高くて、配偶者控除を受けることができないのであれば、妻が専業主婦であるなら、働きに出るほうが得になります。